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詩と戯言は似ている。
賢者と愚者がそうであるように両者には絶対に埋まらない距離がある。 子どもに□と△の積み木を渡し、家を作ってみてと言えば出来る家の形は一つだろう。 ところが□が10個あれば、△が10個あれば、結果はどうなるだろうか。 ○があれば?長方形があれば? 色を塗れたら? 積み木のバリエーションと数こそが教養でありユーモアであり、個性だ。 □と△を高らかに取り出し、角度や置き方を変えて、「新しい家だ!」とする人がいる。 あるいは□と△を放り投げてそれを「表現だ」とする人もいる。 彼ら彼女らは実のところ何も生み出せていないことに気付かない。 悲しいかな圧倒的に積み木の数が足りないのだ。 イーストウッドの『ヒア・アフター』という映画では嬉しいことにディケンズがこれでもかと登場する。 産業革命時代に「子どもの労働力」として靴墨工場で働いたディケンズ。 彼の自伝的小説、『デヴィッド・コパフィールド』の冒頭を読むたびに、自分も積み木を増やして、読むに値する本になりたいものだと思う。 それは次のように始まる。 「ぼくが、自分の人生のヒーローってことに果たしてなれるのか、それともヒーローの座は別の人間に明け渡してしまうのか、それはこの本を読めば、おのずとお分かりだろう。人生の振り出しを、まず出生から始めるなら、ぼくはある金曜日の夜、十二時に生まれた(そう教えられ、そう信じてきたからだが)と書き記しておくことにしよう。時計が十二時を打ち始めるが早いか、おぎゃあと泣き始めたのだそうだ。」 ![]() 『ディケンズの夢』Robert W. Buss (1804-1875)
職人のものづくりの良さ、温かさが伝わる素晴らしい絵本。
![]() ねこのねこらしいしぐさと革の質感が合わさった絵が素晴らしい。 くつやは これが さいごの仕事と おもいながら、店にある いちばん上等の 革で ねこの足に ぴったりの 長ぐつと、ついでに 道具をいれる かばんも つくってやりました。 ![]()
原作は社会派SFの偉大なる作家フィリップ・K・ディック。
原題は『暗闇のスキャナー』。 ブレードランンアーやアイロボットの原作者といえば知っている人も多いだろう。 ![]() 予備知識が必要だ、とする批評もあるが、ほとんどいらない。心配ない。 というのもこの作品の大半が薬中患者の幻覚と支離滅裂で不思議な会話だからだ。 そこまで会話の意味を深読みしようとせずに、『不思議の国のアリス』のパイプをふかすイモムシやイカれ帽子屋との会話を楽しむように、その不思議な魅力に浸って欲しい。 世界観の設定だけは抑えておくとすんなり入り込めるだろう。 ①7年後の近未来である。 ②麻薬”D”が社会問題になるほど流行している(アメリカ人の二割が使用) ③そのためドラッグのリハビリ施設”ザ・パス”を経営する会社がダントツで成長している。 ④主人公は麻薬捜査官であり、麻薬ディーラーの仲間となって日々奮闘中。 ⑤署での勤務時は特殊なスーツ(光学迷彩のようなもの)を着ているため、直属の上司すら、主人公の正体を知らない。ロッカーもランダムで入り口と出口が設定されるなど、徹底した覆面捜査。 ⑥なので、上司からあのディーラーの仲間(それが主人公)が怪しいからマークしろ、などという、自分自身を監視するキテレツな任務が下ったりもする。 ![]() さて、大半は薬中と長年の潜入操作で薬物依存になりかけている主人公(キアヌ・リーブス)の薬との葛藤に裂かれる。 しかし後半10分の展開と、ラストシーンにはハッとさせられ、なんとも良い後味を残してくれる。 原作者のフィリップ・K・ディックは自身が麻薬中毒者たちと青春を共にした経験があり、いかに善良な人間がいとも簡単に廃人になるか、身を持って知っている。 なんとも不思議な映像体験だけでなく、麻薬というものについて考えさせられる非常に良質なSFである。 この実写とアニメが合わさった不思議な手法はロトスコープといって、一分間のコマを作るのに500時間かかるという。 実写での撮影が終わってから二年後に完成というから、スタッフの努力たるや凄まじい。 出演はキアヌ・リーブスをはじめ、今やアイアンマンとなったロバート・ダウニーJr、そして万引女王ウィノナ・ライダーと少数精鋭である。 中毒者の幻覚を表現した秀逸なイントロは必見。 役者はCSIマイアミのローリー・コクレン。この人の出てくるシーンは毎回不思議で面白い。
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